記事一覧

中国新聞に掲載されました

中国新聞12月15日朝刊に提訴方針決定の記事が掲載されました。

伊方原発の「新規制基準適合性審査」進捗状況

7月に始まった原発の「新規制基準適合性審査」において伊方原発が議題に上ったのは、現在(11月17日)までで21回です。

 7月16日(第1回)
 7月23日(第2回)
 7月30日(第4回)
 7月31日(第5回)
 8月1日(第6回)
 8月15日(第9回)
 8月21日(第11回)
 8月22日(第12回)
 8月28日(第14回)
 8月29日(第15回)
 9月10日(第17回)
 10月2日(第27回)
 10月3日(第28回)
 10月10日(第31回)
 10月16日(第33回)
 10月17日(第34回)
 10月23日(第36回)
 10月30日(第39回)
 11月7日(第43回)
 11月8日(第44回)
 11月14日(第47回)

10月26日には現地調査も行われています。

第1回は、申請の概要説明でした。

第2回は、規制委員会側からの論点提出でした。

「重大事故対策」関連の資料提出が行われているのは、
第4、6、9、12、15、17、28、31、43回です。

「設計基準事故対策」関連の資料提出が行われているのは、
第17回(緊急時対策所・制御室)、第28回(外部火災)、第31回(緊急時対策所・制御室)、第34回(内部溢水)、第47回(竜巻)です。

「地震動」関連の資料提出が行われているのは、
第5、14、36、39回です。

「津波」関連の資料提出が行われているのは、
第11、36回です。

「火山」関連の資料提出が行われているのは、
第27、43、44回です。

第33回には、「審査会合への資料提出状況(四国電力)」を提出しています。

第28、31、43回には、「指摘事項に対する回答一覧表」を提出しています。

10月10日の第31回会合で、各電力会社の審査会合への資料提出状況(資料4-1)が示されています。

http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/20131010.html

これを見ると、泊3号機、大飯3・4号機、高浜3・4号機、伊方3号機、川内1・2号機、玄海3・4号機の中で一番資料提出が進んでいるのは、確かに伊方3号機です。

しかし、「審査会合への資料提出状況(四国電力)」において「10月下旬に提出の予定」とされている「耐津波設計方針」、「11月上旬に提出の予定」とされている「震源を特定せず策定する地震動」、「11月中旬に提出の予定」とされている「基準地震動」などの地震・津波関係の資料、「11月中旬に提出の予定」とされている「組織・体制」、「教育・訓練」、「LCO/AOT」、「重大事故対策の手順書」などの保安規定関係の資料等がまだ提出されておらず、必ずしも順調に進んでいるとは言えないようです。

最新の、四国電力の「指摘事項に対する回答一覧表」は、次に示されています(資料2-2)

http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/20131107.html

第36回会合では、津波評価について、原子力規制委員会側のコメントへの回答が提出され、四国電力の説明とそれを受けての原子力委員会側とのやりとりが、次で見られます。

http://www.youtube.com/watch?v=d9YNbUIjaNs

第39回会合では、地震動評価について、原子力規制委員会側のコメントへの回答が提出され、四国電力の説明とそれを受けての原子力委員会側とのやりとりが、次で見られます。中央構造線断層帯480キロ連動のケースについて、四国電力が非常に古い知見に基づいた評価しか行っていないこと、さらには、新しい知見を耐震設計に取り入れる考えがないこと(この時点で)が明らかにされています。

http://www.youtube.com/watch?v=IjWacPUUfpY

時間がかかりますが、ぜひ視聴してみられることをお勧めします(時間がなければ、四電と原子力規制委員とのやりとり部分だけでも)。

原子力規制委員会「新規制基準適合性審査」
 ↓
http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/

伊方原発の「新規制基準適合性審査」 着々と

原子力規制委員会の「新規制基準適合性審査」は、着々と進んでいます。
これまでの会合で、伊方原発が議題に上っているのは、
 7月16日(第1回)
 7月23日(第2回)
 7月30日(第4回)
 7月31日(第5回)
 8月1日(第6回)
 8月15日(第9回)
 8月21日(第11回)
 8月22日(第12回)
 8月28日(第14回)
 8月29日(第15回)
 9月10日(第17回)
 10月2日(第27回)
 10月3日(第28回)
の13回です。

大まかな流れを見ると、

第1回に、申請の概要説明が行われました。

第2回に、規制委員会側からの論点提出が行われました。

第4回、第6回、第9回、第12回、第15回、第17回は、「重大事故等対策の有効性評価に係る成立性」についての資料を四電が提出しています。第17回には、「緊急時対策所の改善について」、「中央制御室について」、「静的機器の単一故障に係る設計」について、という各資料も提出しています。

第5回、第11回は、地震・津波評価についての資料を四電が提出しています。第14回には、「伊方発電所地震動評価」を四電が提出しています。

第27回には、火山影響評価についての資料を四電が提出しています。

第28回には、「指摘事項に対する回答一覧」を四電が提出しています。「指摘事項」のうち、「有効性評価(重大事故等)」、「外部火災影響評価」についての資料を四電が提出しています。

原子力規制委員会「新規制基準適合性審査」
 ↓
http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/

愛媛県上島町が伊方原発3号機の再稼働を認めない意見書を可決

ファイル 30-1.jpg

愛媛の伊方ネットから

愛媛県の上島町の町議会が、伊方原発3号機の再稼働を認めないよう国に求める意見書を可決したという、愛媛新聞の記事の切り抜きです。

10月1日の愛媛新聞のようです。

しかしこの記事が本当ならばこの意見書の理由はおかしいです。

規制基準そのものが、「安全ではない」と言っています。
つまり福島第一原発事故の原因究明は関係ありません。

網野

広島市提出請願書 最終文書

広島市に提出する最終の請願書です。
http://hiroshima-net.org/yui/pdf/seigansho_20130917.pdf

請  願  書

紹介議員

件 名
 四国電力伊方原発3号機再稼働に反対する広島市議会決議を求める請願

要 旨
 私たちの生存権を侵す四国電力伊方原発3号機再稼働に反対する広島市議会決議を求めます。

理 由
広島市中心部から直線距離で約100キロの所に、四国電力の伊方原子力発電所(伊方原発)があります。

伊方原発は、2011年3月の福島原発事故発生の後、定期点検に入った1号機~3号機がすべて運転を停止していますが、本年7月の原発の新規制基準施行に伴い、四国電力はただちに伊方原発3号機の再稼働を申請し、原子力規制委員会は、新規制基準をほぼ満たす四国電力伊方原発3号機の規制適合を早期に認めると予想されます。規制委員会が規制基準適合判断を行った後、最終的には、政府が再稼働を判断することになります。

しかし、原子力規制委員会の規制基準を満たしていることと安全であることとは、まったく別のことです。下の「伊方原発危険報告」の項に示すとおり、伊方原発はきわめて危険な原発です。

原子力規制委員会は、「重大事故は起こる」ことを前提とし、苛酷事故が起こる確率を「1炉あたり100万年に1度」とする数値目標を具体的にあげて、これを目標としています。現実には、1979年のスリーマイル島原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故、2011年のフクシマ原発事故と、およそ10年~20年に1度の間隔で原発苛酷事故は発生しています。

原子力規制委員会にとって原発苛酷事故発生は確率問題ですが、私たち生活者にとって、伊方原発事故発生は確率問題ではありません。命、健康、ふるさとに、かけがえはありません。伊方原発の苛酷事故は絶対に起こってはならず、「重大事故は起こる」ことを前提とする原発の再稼働を認めることはできません。伊方原発の苛酷事故は百万に一つも起こってはならず、この保証が与えられない限りは広島市民としては同原発再稼働に反対すべきです。

さらに同原発は苛酷事故を起こしていない通常運転中でも放射性物質のトリチウム(三重水素)を液体(トリチウム水)の形で年間50兆ベクレル以上も瀬戸内海に放出しており、私たち広島市民の健全な市民生活の脅威となっています。この観点からも同原発は一刻も早く廃炉にすべきと考えます。

伊方原発危険報告

1 苛酷事故発生の危険性を高める要因

1-1 伊方原発の燃料―ウラン用原子炉にプルトニウム燃料

 伊方原発3号機は157体の核燃料集合体を炉内に装荷して、核分裂で生じる熱を利用して発電を行う。核燃料集合体1体の中には、264本の燃料棒が格納されている。3号機の全ウラン装荷量は約74トンである。広島原爆で用いられたウランを75kgと考えると、重量にして約1000倍のウランが発電に用いられる。
 伊方原発3号機は、2006年3月に経済産業大臣からプルサーマル炉への原子炉設置変更を許可され、2010年3月にプルサーマル炉の運転を開始した。プルサーマル炉とは、プルトニウムとウランの混合燃料(MOX燃料)を使用する炉のことである。伊方原発3号機は、もともとウラン燃料用に作られた原子炉であるが、そのウラン燃料用原子炉でプルトニウムとウランの混合燃料の使用を始めた。現在、伊方原発3号機の原子炉には、16体のプルトニウム・ウラン混合核燃料集合体が入っている。
 MOX燃料の組成は、プルトニウム239が6%、プルトニウム241が3%、ウラン238が91%である。プルトニウム239の核分裂の熱エネルギーはウラン235に比べ40倍である。また、MOX燃料はウラン燃料よりも溶融点が70℃低い(2720℃程度)。したがって、プルサーマル炉は通常のウランを燃料とする炉に比べて制御がむずかしく、燃料溶融の危険も大きい。

1-2 加圧水型原子炉―蒸気発生器細管の金属疲労

 日本で採用されている発電用商業原子炉は、アメリカのGEが開発した沸騰水型原子炉(BWR)か、ウェスチングハウス社が開発した加圧水型原子炉(PWR)かのいずれかである。伊方原発は、加圧水型原子炉(PWR)を採用している。どちらの型も、原子炉内に装荷した核燃料で核分裂を起こし、核分裂で生じた熱で蒸気を発生させて、その蒸気で発電用タービンを回して電気を作るという原理は共通している。
 ただし、沸騰水型原子炉(BWR)が原子炉で発生させた蒸気をそのままタービンに送って発電する仕組みになっているのに対し、加圧水型原子炉(PWR)は、原子炉で発生させた蒸気の熱を別系統の水に移して蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電するという仕組みになっている。この熱交換を行う所が「蒸気発生器」である。伊方原発3号機には3基の蒸気発生器がある。
 蒸気発生器には、1基あたり約3400本の電熱管が入っている。この電熱管は、厚さわずか約1.3mm、直径約2cm、長さ約20mの逆U字型の細管である。細管がこのように薄く作られているのは、熱交換を効率よくするためである。この細管の中を流れる水蒸気は、157気圧、約300℃である。四国電力はこの「高温高圧」について、原子炉容器がこの「高温高圧状態に耐えられるよう、厚さ約20cmの鋼鉄でできています」と説明しているが、蒸気発生器の細管においては、この高温高圧状態を厚さわずか約1.3mmの金属壁が受け止めている。
 蒸気発生器の細管は、外側を流れる2次系の水や内側を流れる蒸気による振動と放射能とこの高温高圧にさらされ、容易に金属疲労を起こし、変形・磨耗・破断の危険が増す。実際に、1991年2月には、関西電力美浜原子力発電所2号機において、蒸気発生器細管のギロチン破断事故が発生している。
また、本年6月7日、アメリカ・カリフォルニア州にある電気事業者「南カリフォルニア・エジソン社」は、同社のサン・オノフレ原発2号機と3号機の廃炉を決定した。同原発の「蒸気発生器の配管に異常な磨耗があり、安全性に疑問を持った地元市民の激しい反発があり、これに配慮したアメリカ原子力規制委員会が再稼働の許可を与えなかった」ためであると同日付で共同通信が報道している。同原発の蒸気発生器は2009年に交換されたばかりで、メーカーは三菱重工業であった。伊方原発の蒸気発生器のメーカーも三菱重工業である。

1-3 伊方原発の使用済み核燃料―間隔を詰めて置かれた大量の核物質

 原子炉内で3~4年使用された核燃料は、取り外されて各原発内の使用済燃料プールに貯蔵され、数年間冷却して熱と放射能を減少させた後、再処理施設に送られて再処理を行うことになっている。ところが、現在、国内の再処理施設である六ヶ所再処理施設には使用済み核燃料受け入れの余裕がないので、各原発内に大量の使用済み核燃料が蓄積されている。伊方原発の敷地内には、2011年末のデータで、使用済み核燃料が1,408体蓄積されている(現在はもう少し増えていると考えられる)。燃料棒の数に直すと、約37万本の使用済み核燃料棒が蓄積されているということになる。新燃料に換算して約600トンである。
使用済み核燃料の成分比は、ウラン235が約1%、プルトニウムが約1%、核分裂生成物(セシウム137、ストロンチウム90などのさまざまな核種から成るいわゆる「死の灰」)が約3%、ウラン238が約95%であり、放射能が非常に高い。伊方原発の敷地内には、約6トンのウラン235、約6トンのプルトニウム、約18トンの核分裂生成物が存在しているということになる。
これらの使用済み核燃料は、伊方原発の各号機に設置されている使用済み燃料プールに貯蔵されている。プールの深さは約12mで、底部4m(燃料棒の長さとほぼ同じ)の碁盤の目状のラックに使用済み核燃料が収納され、冷却は水で行われている。
伊方原発の使用済み燃料プールの貯蔵容量は、1999年までは1,618体であった。ところが、現在の貯蔵容量は2,609体となっている。これは、「リラッキング」が行われたためである。リラッキングとは、使用済み核燃料を1体ずつ収納するラックの配置間隔を詰めることによって使用済み燃料プールの貯蔵容量を増やすことを言う。リラッキングによって相互の間隔が縮まることは、使用済み燃料の発熱量を高め、事故時の燃料露出や溶融の時間を早め、再臨界のリスクを高める。

1-4 南海トラフ・中央構造線

 地球の表面は一枚の安定した岩板から成っているのではなく、何枚かの岩板から成っていて、日本列島は「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」「ユーラシアプレート」「北米プレート」という4つの岩板が接する場所にある。地震は、プレートとプレートが接するところで頻発する。
静岡県から宮崎県にかけての太平洋沖にある「南海トラフ」は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下にもぐりこんでいるところにできている海溝である。5月24日、政府の地震調査委員会は「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」を発表した。「南海トラフの地震」の震源域の北端には、深度30km付近にフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界があってそこで深部低周波地震が繰り返し発生している帯状の領域がある。この領域では、プレートがゆっくりすべる「スロースリップ」という現象が起きているが、プレート間のひずみはスロースリップによってすべて解放されているわけではない。南海トラフ沿いの巨大地震が起きると、この領域のプレート境界も引きずられてひずみが一気に解放される(大地震が起きる)可能性がある。伊方原発の建つ佐田岬半島は、この「南海トラフの地震」の震源域の北端の領域に含まれる。地震調査委員会の長期評価は、南海トラフ全域でM8~9クラスの地震が今後30年以内に起こる確率を、60%~70%としている。
 伊方原発の建つ佐田岬半島の北側には、日本最大級の断層系である「中央構造線」が走っている。中央構造線は関東から九州にかけて西南日本を縦断する大断層系である。近畿南部から四国にかけては中央構造線に沿って約360kmにわたり活動度の高い活断層「中央構造線断層帯」が見られる。「中央構造線断層帯」の西側にはさらに「別府―万年山断層帯」があり、両者は連続している可能性がある。1596年には、9月1日に中央構造線断層帯の川上断層セグメントでM7.0の慶長伊予地震が起こり、次いで9月4日に別府湾内の別府-日出生断層帯が動いてM7~7.8の慶長豊後地震が発生、さらに9月5日にはM7~7.1の慶長伏見地震が京都で発生した。慶長伏見地震では、四国中央部から東部にかけての中央構造線断層帯も同時に動いたと推測されている。慶長豊後地震の際には、別府湾内にあった島(瓜生島)が地震と津波で一日にして海底に没したという伝承がある。1596年からすでに400年以上が経過しており、中央構造線断層帯にはエネルギーが蓄積していると考えられる。

2 苛酷事故が起こった場合の広島市への影響

2-1 原子力規制委員会のシミュレーションに基づく予測

 伊方原発で苛酷事故が起こった場合の広島市への影響を考えるときに、原子力規制委員会が行ったシミュレーションが参考になる。原発苛酷事故が起こり、福島第1原発事故における1号機~3号機の3基分の総放出量(もしくは発電所の出力比に応じた放射性物質量)が一度に放出し、10時間放出が継続したと仮定し、地表面近傍での被曝を推定した場合、原発から100km(伊方原発と広島市中心部との距離)地点での予想被曝線量(実効線量)は7日間で4mSvとなる。7日間あたり4mSvは、1時間あたり約24μSvと換算できる。空間線量率を実効線量に直すときには、係数0.6が掛けられるので、1時間あたり約24μSvの被曝をするということは、1時間あたり40μSvの空間線量率の環境にいるということになる。空間線量率40μSv/hというのは、2012年12月6日に福島第1原発敷地内の1号機原子炉建屋から約400mの免震重要棟前で計測された空間線量率の約2倍であり、防護服を着用しても長く留まることがはばかられる線量である。
 2013年9月5日に全部改正・施行された「原子力災害対策指針」では、緊急事態において、空間線量率が500μSvになった場合は即時避難を行い、空間線量率が20μSvになった場合は「1週間程度内一時移転」を行うことになっている。広島市は、この「1週間程度内一時移転」を行う区域になることが予想される。しかし、空間線量率40μSv/hという環境に1週間さらされて無事であるとは考えにくい。また、約100万の広島市民を「一時移転」させる場所を確保することは非常に困難である。
 さらに、起こり得る苛酷事故が、このシミュレーションが前提としているような福島第1原発事故の程度にとどまる、という保障はどこにもないことを心しておくべきである。

2-2 チェルノブイリ原発事故被災地の現状から

伊方原発で苛酷事故が起こった場合の、広島市への長期的な影響を考えるときには、現在チェルノブイリ原発事故被災地で起こっていることが参考になる。
ウクライナ政府の報告によると、チェルノブイリ原発事故で被曝した両親から1992年以降に生まれた子どもたちにおいて、「健康な子ども」の割合は年を追って低下し、「慢性疾患の子ども」の割合は年を追って増加している。1992年には、「健康な子ども」の割合が23%、「慢性疾患の子ども」の割合が20%であったが、2008年には、「健康な子ども」の割合が6%、「慢性疾患の子ども」の割合が77%となっている。
また、同じくウクライナ政府の報告によると、チェルノブイリ原発事故での成人避難者において、1988年には「健康」な人の割合が65%、「慢性疾患」の人の割合が35%であったが、2008年には「健康」な人の割合が20%、「慢性疾患」の人の割合が80%となっている。この「慢性疾患」は、非がん性疾患である。
原発過酷事故が起こった場合、その被災地における健康への影響は、20年のスパンで見たとき、収束に向かうのではなく、確実に増大している。事故の影響が「がん性疾患」に限定されないことにも注意すべきである。

3 平常時の放射性物質放出

 伊方原発からは、平常運転中、また運転停止中でも、恒常的に放射性物質が放出されている。『原子力施設運転管理年報』には、各原発から気体として排出された「放射性ヨウ素」・「放射性希ガス」、液体として排出された「トリチウム」・「トリチウム以外の放射性物質」の量が、年度ごとに公表されている。伊方原発からもさまざまな放射性物質が排出されているが、伊方原発において特に桁違いに排出量が大きいのが、トリチウムである。トリチウムについては、『原子力施設運転管理年報』には液体として排出されたものだけが報告されているが、気体として排出されるトリチウムの量も膨大なものであると考えられる。
 伊方原発からのトリチウムの排出量は、日本の原発の中でも特に大きい。2001年から2010年までの10年間に島根原発から排出された液体トリチウムの量が4兆3500億ベクレルであるのに対して、伊方原発から排出された液体トリチウムの量は552兆ベクレルである。
 トリチウムは水素の放射性同位体で、原子核は陽子1つと中性子2つから構成される。ベータ崩壊を起こしてヘリウム3へと変わるときに、18.6keVのエネルギーを発生させる。半減期は約12年である。トリチウムは水素の同位体であるため、酸素と結合してトリチウム水(三重水素水HTO)という形で存在することが多い。トリチウム水は、普通の水と性質や反応にほとんど違いがないため、普通の水から分離することがむずかしく、分離するためには非常にコストがかかる。
トリチウムから発せられるベータ線のエネルギーは小さく、飛距離も短いことから、国際放射線防護委員会(ICRP)や電力会社は、「トリチウムはほぼ無害」と言い続けてきた。
 しかし、例えば、減速材・冷却材に重水を使用するカナダのピッカリング原発は、膨大なトリチウムを環境中に放出し(1972年1年間で液体トリチウム40兆ベクレル、気体トリチウム530兆ベクレルを放出)、その周辺では、トリチウムが原因と考えられる健康被害が発生している。1989年及び1991年に発表された研究報告で、クラークらは、ブルース原発とピッカリング原発近傍で0歳から14歳までの子ども36名の白血病死が発生し、その標準化死亡比は1.40で、原発操業開始前と比較すると明らかに有意であることを報告した。また、1991年にジョンソンとルーローは、ピッカリング原発25km以内地域での先天的欠損症、死産、周産期死亡、新生児死亡、乳児死亡に関する研究を発表し、トリチウムの影響について全体として有意な結果が得られ、特にピッカリング原発からの水蒸気トリチウム排出量と中枢神経系欠損との間に明らかな関連があることを報告した。
 トリチウムは、炭素と結合しやすい性質を持っている。トリチウム水に汚染された土地で生育した動・植物の体内には、有機分子の炭素原子と結合したトリチウム(OBT=Organically Bound Tritium)が蓄積される。人間は、これらの動・植物を摂取したり、トリチウム水を直接飲んだり吸い込んだりすることによって、体内にOBT を蓄積する。 OBTはトリチウム水よりも20~50倍も長く体内に留まる。また、OBT 自身が有機分子の一部を成すので、OBT はDNAなどの重要な有機分子に近い場所に留まることになる。
 また、トリチウムは、生命活動を担う有機高分子化合物に摂り込まれた後、元素転換を起こすことで、生体にダメージを与える。タンパク質、酵素、DNAなどの有機高分子化合物は、水素結合によってその構造を保っている。ところが、水素の同位体であるトリチウムは、水素結合を担う水素があるべきところに、水素に代わって摂り込まれる。放射性物質であるトリチウムは、β崩壊を起こしてヘリウム3に変わる。ヘリウム3は水素結合を担うことはできないので、トリチウムを摂り込んだ酵素、DNAなどの有機高分子化合物は、構造を保つことができず、機能を失ってしまう。
発する放射線のエネルギーが小さく、飛距離が短くても、細胞を構成する有機分子そのものに組み込まれた放射性物質の影響は大きい。国際放射線防護委員会(ICRP)や電力会社のトリチウムによる被曝の評価は、OBT の特性や元素転換のもたらす結果を考慮に入れていない。

付言 四国電力管内の発電設備容量

 昨年(2012年)夏の四国電力の電力使用のピークは、8月7日の526万kWであった。この時期、四国電力のピーク時供給実績は571万kWである(2012年8月21日)。
 原子力発電を除く四国電力の自社発電設備は、約495万kWである。しかし、四国電力管内には、四国電力自社設備以外に、電力を大量に供給できる発電設備がいくつもある。電源開発の橘湾発電所は210万kW、電源開発と太平洋セメントが所有する土佐発電所は16.7万kWの発電能力を持っている。電源開発の水力発電設備は18.7万kWの発電能力を持つ。電源開発は電力の小売は行わず、これらの発電所は全量四国電力に電力を供給できる。さらに、住友共同火力の壬生川火力発電所(25万kW)・新浜西火力発電所(30万kW)・新浜東火力発電所(3万kW)・水力発電設備(8万kW)があり、四国電力は住友共同火力からも電気を買っている。四国電力は優にピーク時最大750万kWの供給能力を持つ。
 原子力発電所が稼働しなくても、四国電力は十分な電力供給能力を持っている。

平成25年9月17日

広島市議会議長 
碓井 法明 様

結・広島
広島市安芸区矢野町752-29
代表  原田 二三子
(ほか     人)

網野

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