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『結・広島』、広島県知事選両候補に伊方原発再稼働を問う質問書を届ける


『結・広島』、広島県知事選両候補に伊方原発再稼働を問う質問書を届ける

 「やはり、四国電力伊方原発3号機の再稼働について、広島県知事選挙の立候補者にその可否を聞いてみたい」といいだしたのは川崎久留実さん(広島2人デモ名:Kさん)です。

『平成25年度広島県知事選挙』の立候補者は、自民・公明・民社推薦の現職、湯崎英彦氏(立候補届名:ゆざき英彦)と共産推薦の大西理氏(立候補届名:大西オサム)の2人だけ。

 広島県民の生命・財産、安全・健康に第一次的責任を負うのは広島県知事です。いわば今回の選挙は、広島県民の「生存権」に対して第一義的責任を負う政治的責任者を選ぶ選挙です。
 特に、福島原発事故後最初の知事選挙で、広島からもっとも近い伊方原発の再稼働が時間の問題となっている現状では、Kさんが、四国電力伊方原発再稼働に関し「候補者にその姿勢と考え方を尋ねてみたい」と考えたことは十分に理解できます。
ということで一同賛成、「やりましょう」ということになりました。

 質問書の執筆者はいいだしっぺのKさん、監修者は原田二三子と哲野イサク、図表作成やレイアウトは網野沙羅、候補者への「届け役」は重広麻緒(広島2人デモ名:じゃけえさん)と役割分担が決まりました。広島県知事選挙は2013年10月23日告示、11月10日が選挙日とあってあまり時間もありません。やはり回答をするにも最低1週間程度は見ておかないと良識に外れるなどの意見が出され、質問提出日を10月28日と決めました。10月28日の「届け日」には「届け役」のじゃけえさんに、時間の自由が効く哲野と網野が介添え役となりました。出発間際まで誤字脱字などが見つかってバタバタしました。
 
 そして届けたのが『広島県知事候補者への質問』(PDF A4 5頁)です。
http://hiroshima-net.org/yui/pdf/20131028.pdf

質問書は、

【1】
原子力規制委員会の規制基準適合性審査で「伊方3号機の審査」が突出して進み、再稼働最有力候補となっていること

【2】
規制委の「放射性物質拡散シミュレーション」では、広島県最南端、伊方原発から約60kmの呉市黒島・横島付近は10mSv(ICRP実効線量)の被曝が予想されていること

【3】
広島市も4mSvの被曝が予想されていること

【4】
一方で原子力苛酷事故時の避難基準や一時移転基準などを定めた「原子力災害対策指針」(2013年9月5日全部改正、即日施行)に照らしてみると、呉市黒島・横島地域あるいは広島市は「一時移転の対象となる「OIL2」に該当すること
(なお、「原子力災害対策指針」は原発再稼働のための「規制基準」と一対をなす重要法令ですが、大手マスコミはその存在や内容をほとんど報じていません。新聞やテレビに情報源を頼らず、原子力規制委員会のWebサイトを情報源としている人には比較的よく知られていますが、反原発を標榜する人たちを含め情報源を原子力規制委員会のサイトに依存せず、相変わらず新聞やテレビに依存している多くの人には対策指針の存在や内容についてほとんど知られていません。情報源を新聞・テレビに依存する限り、簡単に情報操作や世論操作に乗ってしまうのです。考えてみれば当たり前のことです)

【5】
広島市だけでなく、呉市・廿日市市・江田島市・大竹市など広島県西南部の人口密集地域はほとんど「一時移転」の対象地域となる蓋然性があること

【6】
福島原発事故以降、日本の原子力行政は劇的な方針転換を遂げ、「原発苛酷事故は絶対に起こらない」とする原発安全神話から脱却し、「ゼロリスクはない。すべての原発は苛酷事故を起こす可能性がある」との立場から、原発規制行政を行いまた「原子力災害」(“核施設事故”という人災をまるで天災であるかのように印象づけるおかしな用語ではありますが)に対してもその立場から指針を作成していること

【7】
広島県民の生命・財産、安全・健康に第一次義的責任を負っているのは広島県知事である

 以上の諸事実を確認しておいてから、以下の簡単な質問を出しています。


四国電力伊方原発の再稼働に反対を表明されますか?
黙認されますか?
賛意を表明されますか?

 質問書は回答期限を11月6日午後5時頃と定め、できれば文書で回答して欲しいこと、11月6日のその時間に取りに伺うこと、回答内容については一言一句誤りなく、「結・広島」「広島2人デモ」のサイトなどで広島県民に広く伝えること、などを記して締めくくっています。

 28日のデリバリー日は網野の車に乗り込んで、まず現職に敬意を表して「ゆざき英彦」選挙事務所から訪ねました。「ゆざき」事務所は広島駅にほど近いオフィス街の瀟洒なビルの1階(ストリート・フロア)にありました。ところがぐるぐる回っても駐車場が見つからず(最寄は全て満車)、結局エンジンをかけたまま網野が車で待機、じゃけえさんと哲野だけが訪問することになりました。

 中に入るとまず目に入ったのが三方の壁一面に貼られた「必勝祈願」の張り紙。自民党・公明党・民主党の党首はもちろん、有力国会議員や県会議員などから寄せられ、壁一面所狭しと貼られています。自・公・民が押す有力現職候補の面目躍如といったところです。哲野が「Webサイトを見ると“お気軽にお立ち寄り下さい”と書いてあったので気軽に立ち寄ったのですが・・・」と切り出し、要件を伝えると、極めて物腰が洗練された受付の女性がにこやかに応じて、「少々お待ち下さい」というと奥の方の事務所に引っ込みました。やがて出てきて、これもにこやかに「もう少々お待ち下さい。責任者が出てまいります」

 これもにこやかに現れたのは事務所長の大方幸一郎氏。大方氏は所要で出かけるところというので、実際に対応してくれたのは事務局長の増田和将氏。お二人ともりゅうとしたスーツ姿でそつのない対応ぶり。しかし大企業の中堅ビジネスマンとは見えず、伝統的保守政治の世界で暮らす人間が身につけているどこか“水っぽさ”が漂っています。

 じゃけえさんが質問書を渡す際、ご理解を得るため一度読み上げたいと申し出ると、増田氏は快諾し、テーブルと椅子を勧められました。読み終えると哲野が
哲野「私どもの質問意図・趣旨はご理解いただけましたでしょうか?」
「完全に理解しました」と増田氏。
増田氏「湯崎も(経産省の)資源エネルギー庁に勤務していたこともあり、原発問題には詳しいのです」
哲野「しかしながら質問の視点は原発推進の側に立つものではなく、いわば経済・エネルギー問題の視点に立っているのではなく、広島県民の生命・財産の問題、いわば生存権問題の視点に立っておりますので、湯崎候補としては全く新しい視点かもしれませんね」
増田氏「湯崎は現在広島県内を遊説中なので、すぐ回答というわけにはいきませんが、期限の11月6日には何とか間に合うようにしましょう」
哲野「選挙期間中のお忙しいところ誠に恐縮です。感謝いたします。」
じゃけえさんが「当日私が取りに参ります」

 辞去する時に、増田氏は戸外まで見送りに出、深々と頭を下げました。慌てて深々と頭を下げ返す哲野とじゃけえさん。網野の待つ車に戻る道すがら、哲野が、じゃけえさんに「湯崎事務所の対応は極めて誠実だった、といわなければフェアじゃないだろうね。頭のいい人たちだ。ボクの印象だけど、増田氏は伊方原発再稼働問題が今度の選挙の争点化するのはマズイな、と感じたんじゃないだろうか」

 車に乗り込むと今度は大西事務所へ。もうあたりはとっぷり暮れています。

 大西事務所は広島市役所にほど近い革新系の諸団体が多く事務所を構えるビルの4階にあります。近傍の駐車場はもう5時過ぎとあってがら空きです。今度は網野と3人で訪問することができました。入るとこちらも事務局長(『清潔であたたかい民主県政をつくる会』)の尾野進氏ともうお一人で対応してくれました。同じようにじゃけえさんが質問書を読み上げました。

尾野氏は「趣旨はよく理解できました。大西と相談の上回答します。私たちは原発には反対です。中国電力島根原発の稼働申請も近いですし、これにも反対しています」
哲野「そこなんです。今朝も朝日新聞に島根原発3号機稼働問題に目を向けさせるような悪質な記事が出ていましたが、島根原発3号機は沸騰水型です。当然ベント装置が稼働時に装着されていることが絶対条件です。猶予期間はありません。また3号機は運転実績はありません。今稼働を申請してもベント装置が装着されていない状況では実質審査は進みようがありません。新規原発の稼働承認という意味でも、島根3号機稼働問題は長期的には大問題ですが、広島県民にとって目の前に差し迫った危険は、むしろ四国電力の伊方原発です。これは広島県民の生存権問題に直結しています。大西候補がそこにちゃんと目を向けているかどうかを是非とも確認したいのです」
網野「期限前に回答をいただけるならご連絡下さい。取りにお伺いします。回答をすぐにでも掲載します。是非とも広島県民の投票行動の参考に提供したいですから」

 こうして質問書を無事届け、書面による回答の約束を取り付けてこの日を終わりました。以上報告いたします。